人生設計(日野原:聖路加国際病院理事長)

○20代(独身世代)「一般教養に専門性をプラスして大いに学ぼう。進路は自分の責任で選択を」
・これまで得てきた情報を自分なりに咀嚼し、それを表現するための訓練をする世代。情報を与えられるだけでなく、今度は欲しいものを自分で探すことが大切な時期。
・どの方面の仕事に就くかという方向付けが決まる。その方向性は先生や親が決めていることもあるのだけど、「私はこれで本当にいいのか」ということを考え、これは私が決定した道だと言う風に切り替え、そのスターティングラインに立つ時期だと思います。
・その時同時に目標は何かということも考えますが、それは年代や環境と共に変わっていいのですよ。しかし、変わるにシテも土台たる幅がなくてはいけない。早くに専門化することなく、基礎となる科学やアートを広げる意味で読書して、その目標を選ぶことも大切。
・「読み物」も「追求するもの」も自分が選択したのだという自覚と責任を持って、選択することが重要。

○20代後半〜40台半ば(子育て世代)「家族と過ごす時間を積極的に作ろう。食事を一緒にすることがポイント」
・会社員だったら中堅クラスとなってバリバリ働いている頃。一方、家庭では子育ての真っ最中。
・多くの日本人は会社のために仕事をするという気持ちが強すぎて、歯車になりきってしまう。自分を殺すことばかりやっていては、年をとってから伸びにくい。会社の歯車には入るけれど、「自分の生活を家庭の中につくる」ということに、もう少し関心と時間を割いてはどうかと思いますね。休みなしに行動することをやめて、休暇をしっかりとって、家族と一緒に過ごす時間を大切にして欲しい。
・「子育て」で大事なことは、子供と一緒に食事をしならが、親の仕事のことやよもやま話をすること。知人に雑誌社に勤めている女性がいて、本当に忙しいけれど、仕事から帰ったら30分は子供と話をするようにしている。「ママは今日ね出張したけどね、電車の故障で遅くなってね、こういうふうなこともあってとても嫌だったけど我慢したよ」とか。職場や仕事の話を子供にすると子供もお母さんだって色んなことがあるんだなと分かる。
子供も今日あった事を率直に親に話してみようと言う気持ちになる。

○40代半ば〜50代(子育て終焉世代)「新しいことにチャレンジを。行動力をつけ、人生の危機に備えたい」
・自分が将来どこまで伸びるかという見通しがだいたい付いてくる。仕事を定年までやるか、脱サラの方へ行くか、考える時期。
・人生は冒険。嵐はあるが、それは当然。自分を試練してくれるのだと言う風に思いながら、夫婦で新しいことを一緒にやろうと決心すると強い。そういう行動力を40代につけておくことが人生の危機を救うのに一番必要。
・子育てから開放され、いよいよ定年が近づいてきたら、これまでやらなかったことに色々チャレンジしてみることをオススメしたい。定年後に備える意味でもね。
・最近の親は子供が学校を出た後も関わりすぎる。レバノンの女性詩人(H・ジブラーン氏)の言葉で「親は子供のために弓をいっぱいに張りなさい、できるだけ力強く。そしてその手を離したときに矢がどこに飛んでいくかは考えなくてもいい。的を決めて離すまでが親の仕事。矢がどこに行くかは子供が決めることだ。」

○60代以降(シルバー世代)「65歳から第三の人生が始まる。これまでの蓄積を活かし、未知の世界を広げよう」
・定年後の生活はまた新しいスタートラインに立ち、自分のやりたいことが存分にやれる新しい人生の始まりとなる時。
・私は2000年の秋に、75歳以上の老人を対象にした、高齢化、少子化の進む世の中で、老人の養ってきた千恵や技術をアピールしていこうという会「新老人の会」を作った。
・「新老人の会」のスローガンは3つ。愛すること。創める事。耐える事。「愛」は人に前向きに生きていくエネルギーを与えてくれるもの。そして年齢に関係なく自分の可能性を広げるために「創める事」を続け、「絶える事」により、いつまでも感性を高め、苦しんでいる人にも配慮の手をさしのべて欲しい。
・年を取ってから音楽や絵画、俳句などを創めて自分でも気が付かなかった世界を掘り、芽が出てきたときの喜びは何物にも変えがたいもの。